近接分光反射スペクトル特性による湿原混在植生の分類
北海道厚岸湖・別寒辺牛湿原<その1>
湿原は、多数の湿原植生が複雑な層構造をなし、湿原タイプとその植生が非常に特異的であるため、植生リモートセンシング技術検証の場として大変有効である。湿原植生を対象として近接リモートセンシング測定により、観測対象物の空間分解能や分光特性を詳細に検討することが出来る。
本研究は、厚岸湖・別寒辺牛湿原と釧路湿原のヨシ・スゲ群落とミズゴケ群落の混在植生を調査対象地域とし、個葉と群落のレベルで、湿生植物タイブごとの分光反射特性と、植物生産構造・物質生産量の特性の相互関係を物理的に検証した。さらに、鉛直方向からのみ提えたマルチスペクトル分光反射だけではなく、複数角方向からの分光反射特性を捉えることで、各植生パターンを持つ湿地植生の群落層構造を明らかにするための基礎的アルゴリズムを開発することを目的し、湿原タイプ別植生の推定に有効な渡長帯の特定を行った。1.各植物群落内での複数観測角による、群落・個葉の分光反射率(強度)の特徴を提えるために、植物要素の空間的配置や群落の層構造と群落内の日射環境を明らかにした。光条件と植物生産量及び層内構造との相互関係を物理的に解明することによって、湿原植生リモートセンシングヘの有効な群落内分光反射メカニズムを明らかにした。
2.個葉の構成あるいは群落全体としての分光反射率にどのような特性パターンを持つのかを明らかにした。
<その2>
【目的】
湿原植生のリモートセンシングヘの基礎研究の1つとして、群落内分光反射を明らかにし、湿原タイブ別植生の推定に可能な波長を抽出することを目的とした。具体的には、(1)個葉と群落のレペルで、植生タイブごとの分光反射特性と、植物生産構造の特性との関係を物理的に検証すること。(2)鉛直方向からのみ捉えたマルチスペクトル反射だけではなく、複数方向からの分光反射特性を捉えることで、群落層構造を明らかにすること。【調査・解析方法】
厚岸湖・別寒辺牛湿原のヨシ・スゲ群落とミズゴケ群落の混在植生を対象地域とし、二方向性分光反射率の測定を行なった。草冠上2mの高さから、方形区1m×1 m内における、低・中・高層湿原の代表的な群落・個葉に対し、鉛直・前方・後方から(観測天頂角±15゜,±30゜±45゜)測定した。また、個葉の測定に関して、紫外可視分光光度計による実験室内測定も行い、群落測定結呆と比較した。さらに、バイオマスと日射環境の関係を明らかにするため、各調査区で生産構造図作成のための刈り取を行なった。【結果と考察】
湿原の植生タイプによって反射率が最大になる波長域が異なり、さらに鉛直方向よりも斜め方向からの分光反射が種判別に有効になることが分かった。すなわち、分光反射方向を選択すれば、少なくとも地上2mの近接分光反射測定データから、湿原タイブごとの植生の判別が可能になることが明らかになった。また、各植生の判別に有効な波長と方向は以下のような結果である(図1、2)。
1.高層湿原…520〜680nm、30゜と830〜900nm、鉛直
2.中層湿原…650nm、30゜
3.低層湿原…750〜800nm、45゜
群落の分光反射率は複雑なので、必ずしも個葉の分光反射率と同様にならない場合もあるが、個葉測定結果から、測定時期を初夏として考えた場合、活力度を判別するにはlandsat TM bandの組み合わせが、band1・3>band2・3>band3・4の順で有効である。また、図3より、全種及び湿原タイプ別の判別には、 band1・3>band3・4の順で有効であることが推測される(図3、4)。戻る